閉塞性肥大型心筋症 HOCM
#循環器疾患
●運動や脱水など交感神経亢進に伴う心室の過収縮により左室流出路狭窄が増大し,失神や突然死をきたすことや,左室拡張障害に伴う心不全や心房細動の発症が,予後を規定する.
●閉塞性肥大型心筋症は,安静時あるいは薬剤負荷や運動負荷により左室内圧較差が30mmHg以上のものとして定義される.肥大型心筋症患者において,収縮期駆出性雑音をLevine Ⅲ/Ⅵ以上で聴取した場合,多くは左室流出路の圧較差は30mmHgを超える.
●心筋収縮関連蛋白の遺伝子異常を認め,常染色体顕性遺伝形式で家族内発症をきたす場合がある.
【問診】
年齢:幼児から高齢者まで幅広く発症しうる疾患.
失神、意識消失
運動時の失神の鑑別で不整脈疾患も挙げられるが,本疾患の失神の原因は,運動に伴う心室過収縮とそれに引き続く流出路狭窄の増大である.
家族歴
【身体所見】 #胸部聴診
心雑音:収縮期駆出性雑音。最強点は第4肋間胸骨左縁~心尖部。Valsalva法で増強
過剰心音:心尖部にⅣ音を聴取(→心室拡張不全所見であり高血圧性心疾患,肥大型心筋症,陳旧性心筋梗塞などを疑う)
大動脈弁狭窄症と異なり,頸動脈への放散音は聴取されない
■閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の流出路狭窄
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【検査】
心エコー:非対称性心室中隔肥厚、僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)
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B:①僧帽弁前尖の収縮期異常前方運動(SAM:Systolic Anterior Movement),②僧帽弁前尖後退速度(DDR:diastolic descent rate)の低下,③心室中隔の非対称性肥厚(ASH:Asymmetric Septal Hypertrophy:左室後壁の1.3倍以上)
二峰性頸動脈波
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心電図:
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A:RV5+SV1=38mm(左室肥大のcriteria≧35mm)とvoltage criteriaが満たされ,V5,V6では巨大陰性T波(Giant Negative T wave)も認められる.HOCMに合致する所見である.
心房細動 AFの有無,心室性期外収縮や非持続性心室頻拍の有無を確認
■閉塞性肥大型心筋症と大動脈弁狭窄症の鑑別
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【治療】
左室内圧較差の是正:β遮断薬,Ca拮抗薬,Ⅰa群抗不整脈薬
突然死予防:過激な運動の禁止,β遮断薬,アミオダロン,埋込み型除細動器
激しい運動は避けてください 激しい運動は,心室の過収縮を引き起こし,左室流出路狭窄を増大させ,失神や突然死の原因となる
【予後】
閉塞性肥大型心筋症は,非閉塞性肥大型心筋症と比べ,予後が悪いことが知られており,閉塞を有するかどうかの診断が重要である.また,安静時には閉塞を認めないが,運動時や運動直後に閉塞を認める肥大型心筋症(latent HOCMもしくはprovocable obstruction)も,非閉塞性肥大型心筋症と比べ予後が悪いことが報告されており,安静時のみの検査では診断が十分でない症例も存在する.